
「凪待ち」にごっりごりのバイオレンスを期待して(それどうなの)肩透かしをくらったので、同じく白石和彌監督によるごっりごりのバイオレンスを堪能いたしました。
作品概要
孤狼の血
制作:日本、2018年
監督:白石 和彌(北海道、1974~)
脚本:池上 純哉(山梨県、1970~)
撮影:灰原 隆裕(東京都)
メモ:極悪非道なヤクザたちの抗争を止めるべく動き出した、 マル暴の破天荒な“孤狼”の運命とは…。
あらすじ
昭和63年の広島。呉原東署のマル暴巡査部長大上のもとに、ある女性が「弟が失踪した」と相談に来た。失踪した男性は、巨大組織・広島仁正会の傘下にある五十子(いらこ)会の下部組織・加古村組のフロント企業で経理をしていたという。加古村組は、呉原を地場とする暴力団・尾谷組との対立を深めていた。かねてから尾谷組と交流の深い大上は、男性の失踪を殺人事件であるとみて、これを機に加古村組を潰そうと捜査を始める。一方、県警本部から送られてきた若手刑事日岡は、法を逸脱した大上のやり口に反発しながらも、相棒として捜査に加わる。
登場人物
呉原東署
大上 章吾(役所 広司)
刑事二課(通称マル暴)の巡査部長。非常に破天荒な男で、さまざまな組織と人間の情報を把握しながら反社会勢力と対等に渡り合っている。尾谷組とは家族ぐるみの付き合いをしている。
日岡 秀一(松坂 桃李)
県警本部から呉原東署に異動になった巡査。広島大学卒キャリア組で、常識的な警察官らしい正義感をもっている。コンビを組まされた大上の手法に異議を唱えるが、徐々に変化が生じる。
尾谷組
一之瀬 守孝(江口 洋介)
若頭で、大上と関係が深い。服役中の組長の代わりに組のトップに立っているが、シマを荒らす加古村組に対して怒りを募らせている。
尾谷 憲次(伊吹 吾郎)
組長。14年前に発生した「第3次広島抗争」で五十子会とやり合い、現在は服役中である。
広島仁正会(五十子会、加古村組、全日本祖国救済同盟)
五十子 正平(石橋 蓮司)
五十子会会長。大組織のトップとして常に策略をめぐらし、冷酷な決断を下すこともいとわない。
野崎 康介(竹野内 豊)
加古村組若頭。ニヤついていることが多いが非常に残虐性が高い。尾谷組のシマを荒らして楽しんでいる。
瀧井 銀次(ピエール瀧)
全日本祖国救済同盟代表。大上とは古くからの知り合いで、押し切られて仁正会の動向を明かしてしまうこともある。
初心者には刺激強すぎ⁈ 攻めのエンターテイメント・バイオレンス!
原作は柚月裕子さんの同名小説(2015年発行)。小説版『孤狼の血』は、 第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞しています。
初恋の人は「セーラー服と機関銃」の渡瀬恒彦 (暴力団の若頭役)という柚月さん、『孤狼の血』の続編として2018年に『凶犬の眼』を発表しており、こちらも映画化されるとのこと。楽しみ!
(柚月さんのインタビューはこちら。)
養豚場から始まる“食うか食われるか”の暴力の世界
養豚場での拷問…というと、やはり思い出すのは「ハンニバル」ですよねぇ、うんうん。
さすがに昭和の日本でハンニバル豚を育てているわけもなく、豚ちゃんたちは普通の豚ちゃんでブーブー言ってるだけ。だからなおさら、ここに来る人間、ここに来る人間のやることのむごさが際立ちます。まさかアレを食べさせるとは…。
冒頭にこのシーンをもってくるとは、白石監督なかなか攻めてますね!
という感じで、大衆向け映画にしてはバイオレンス描写は高レベルです。
ダメージを与える前、ダメージを受けた後の描写が多いんで、慣れてる人はそんなにショックを受けないかもしれないけど、バイオレンス初挑戦の人や暴力描写が苦手な人にはキツイかもしれません。
印象的なバイオレンスシーンは?
そうだなぁ。加古村組の吉田(音尾琢真)が大上に追い詰められるシーンかなぁ。男の人は見てられないかもしれない。
あと、一之瀬vs.五十子もよかった!何より日本刀を持った黒スーツの一之瀬がかっこよすぎる!これは女性なら興奮必至ですよ!!
「アウトレイジ」ほどの鮮烈さはないものの、東映にしては頑張ったんではないでしょうか。
それぞれの思惑が渦巻く呉原…大上と日岡の運命は?
この映画、警察×尾谷組×広島仁正会の抗争をどんちゃん騒ぎで描いているだけ、というわけではありません。
新参者の日岡の視点からは、表向きは暴力的で傍若無人な大上って実際のところどんな人間なの?というストーリーが語られます。さらに、14年前の抗争で男が死亡した事件には疑惑がある。
バイオレンスだけじゃなくて、ちゃんとドラマがあるんだね。
そうそう!ここが、淡々と乾いた空気の中で暴力を描いた「アウトレイジ」とはちがうところ。
“こちら側”の人間である日岡を通じて感情的な変化を味わえるので、多くの人が楽しめる作品になっていると思います。
特にクライマックスに向かうきっかけとなる1つの事件。これには結構ビックリしました!
圧倒的な存在感をもつ人間が消えたときの喪失感、虚しさ、後悔。この事件の前と後では、この映画の雰囲気がガラッと変わる。
ちょっとウェットすぎるとも感じたけど、クライマックスは胸アツです!
まとめ
とにかく役者陣の顔力が強くて、しっかりドラマもあり、テンションの上がる作品!
勢いで「もう1本バイオレンス!」と、ついつい映画を漁ってしまいました。
ということで、次は名作「オールドボーイ」だよ!
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