
今をときめく白石和彌監督の作品、1つは観たことあるでしょう。
わたしは「凶悪」しか観たことないんですが、2016年以降「彼女がその名を知らない鳥たち」「孤狼の血」他何本も撮っていて、まさに超売れっ子監督です。
基本的にゲスな方々を撮る印象の白石監督。今回主役はなんと香取慎吾でございます。
SMAP解散から早3年。新たな挑戦と活躍をし続ける香取慎吾を、どう料理したんでしょうか…。
ポスターの慎吾ちゃん、迫力すごいね~
作品概要
凪待ち
制作:日本、2019年
監督:白石和彌(日本、1974~)
脚本:加藤正人(日本、1954~)
撮影:福本淳(日本)
メモ:香取慎吾の熱演が光る!宮城県石巻で繰り広げられる、ひとりの男の転落と再生の物語。
あらすじ
木野本郁男は、川崎で印刷工として働きながら競輪に金を注ぎ込んでいた。しかし、長年同居している恋人の亜弓が娘美波とともに故郷の石巻に戻ることになり、それについて行くことを機にギャンブルから足を洗った。石巻では、亜弓の父勝美との距離感に戸惑いながらも、隣人小野寺の計らいで勤めることになった印刷工場で順調に仕事を始める。そんなある日、競輪場のない石巻で同僚たちが競輪をやっていることを知り、郁男はノミ屋に出入りするようになる。
美波は石巻で旧友と再会してから明るさを取り戻していた。しかしある朝、心配する亜弓と口論になり、家を飛び出した後に音信普通になってしまう。郁男も美波を探すが、苛立つ亜弓と車内で言い争いになり「降りろ」と怒鳴りつけてしまう。その後郁男は美波を見つけるが―
登場人物
木野本 郁男(香取 慎吾)
ギャンブル依存症の印刷工。亜弓とは長年の付き合いで同棲しているが、たびたび金をくすねてギャンブルに充てている。石巻で再出発を切ったのも束の間、ノミ屋でギャンブルを再開する。キレやすい性格だが、いじめられている同僚をかばうなど優しい一面もある。
昆野 亜弓(西田 尚美)
郁男の恋人でシングルマザー。震災をきっかけに石巻から川崎に移ったが、父親が癌になったことをきっかけに娘と郁男を連れて故郷に戻る。明るくしっかり者で、石巻では美容院を開店する予定だったが、何者かに殺害されてしまう。
昆野 美波(恒松 祐里)
亜弓の娘で高校生。震災後に引っ越した川崎でいじめに遭って不登校となり、家でゲーム漬けの日々を送っていた。石巻では定時制高校に編入し、旧友に再会して明るさを取り戻し始める。郁男との関係は良好で、亜弓と結婚するよう勧めていた。
昆野 勝美(吉澤 健)
亜弓の父親、漁師。癌を発症するが入院治療を拒み、船に乗り続けることを選ぶ。震災で妻を失ったてからふさぎ込んでいるが、昔はやんちゃだったらしく人望は厚い。
小野寺 修司(リリー・フランキー)
昆野家の隣人、製氷工場の社員。昆野家とは親しく、亜弓たちが家を出た後に独りになった勝美の世話を焼くなど面倒見がいい。よそ者の郁男にも仕事を見つけてくれたり飲みに連れて行ったりと親切に接する。
愛する人を失った男の絶望と希望を描いた濃厚ヒューマンドラマ
助監督時代に大船渡にお世話になったことから、「いつか震災をテーマにした映画を撮らなければ」と考えていたという白石監督。
そこでこの「凪待ち」という映画に、ちょうど新たな道を歩み始めた香取慎吾を抜擢し、復興道半ばの石巻という場所で喪失と再生を描いたということです。

そんなことを知らないわたしは、ポスターに「誰が殺したのか?」「なぜ殺したのか?」とあるのを見て、よっしゃバイオレンス×サスペンスや!と意気込んで観に行きました。
しかーし。
30分過ぎても何も起こらない。郁夫・亜弓・美波が石巻に移住し、郁夫のギャンブルに不安はあるものの日常の風景が続く。
あれ…?
しばらくして亜弓が殺害され、いよいよかなと身構えたのも束の間。亜弓の事件の捜査のシーンもほとんどなく、ひたすらに郁男が落ちていく様子が描かれる。
そうなんです。この映画、インタビュー記事を読めば分かるんだけど、完全にヒューマンドラマでございます。最近やたら宣伝のミスリード多くないですか⁈
サスペンスとヒューマンドラマだと観るときの心持ちがちがうんで、ほんとやめてほしい。
ちゃんと公式HPチェックしてから行きなよ…
はい、すみません…。
そんなこんなで、サスペンスとして観るとイライラしかしません。犯人が明らかになるシーンも「え、これだけ⁈」って感じで、「なぜ殺したのか?」ほとんど分からないし(笑)
白石監督はインタビューで「最近の映画は説明しすぎだ」と話しています。本作は過剰な説明がないので、エンタメ映画にありがちなダサさやうるささがなく、登場人物の感情をガッツリ濃いめに映し出しています。
印象的だったのは、勝美と美波に助け出された郁男が道を歩きながら号泣するシーン。
自分を変えるつもりで来た石巻で、愛する人を失い、再びギャンブルに狂い、周囲を巻き込みながら墜落した郁男。そんな彼が子どものように泣きじゃくるのを見ていたら、周囲への罪悪感のせいで素直に弱みを見せられなかった彼も、やっと闇から抜けたんだとほっとしました。
そんなふうに愛しさを感じさせるなんて、慎吾ちゃん凄いなぁ。
慎吾ちゃん、まさに熱演でしたよ~。
ギャンブル依存症にしてはちょっと声に汚れがなさすぎるかなぁという気もするけど…って、ギャンブル依存症のイメージひどすぎかっ。タバコ吸いまくりシーンがあれば完璧だったかなぁ…。
まとめ
エンドロール、凪いでいる海の底。かつて誰かの家の中にあった家具やピアノが静かに沈んでいます。
震災で喪失を味わった人々の生活や心を表しているようでした。
それでも人は生きていく。
「凶悪」のときもそうだったけど、白石作品って観終わったあとにぐぐぐ~とくるんだよなぁ。
今回のリリー・フランキー、「凶悪」とはちがう怖さがあるよね!

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