人生最後の大仕事⁈映画「運び屋」感想&ネタバレ

退職してからすっかり気が抜けてしまい、抜け殻のような日々を送っています。
頭は鈍くなってしまったけど、ずーっと公開を待ちわびていた作品ということで、久々の映画鑑賞。

「アメリカン・スナイパー」以来2回目の、クリント・イーストウッドです!!

作品情報

運び屋
(原題:THE MULE)

制作:米国、2018年
監督: Clint Eastwood (1930~)
脚本: Nick Schenk (1965~)
メモ:“おバカ”なおじいちゃんが麻薬の運び屋に!笑いと切なさに満ちた120分。

あらすじ

デイリリーの農場を営むアール・ストーンは、80代になっても精力的に仕事をし、人々に囲まれ称賛を浴びることを楽しんでいた。一方で長年家庭をほったらかしにした結果、家族からは完全に見放されてしまっていた。
十数年の時を経て、経営が傾いて農場は差し押さえられてしまう。行く先のないアールは、愛車の古トラックに荷物を積み、唯一の見方である孫娘ジニーの結婚祝いパーティに向かった。しかしそこで前妻メアリや娘アイリスに出くわし、激しい叱責を受ける。落ち込み帰ろうとするアールであったが、パーティに参加していた1人の青年が彼に近づき、「車を運転するだけでお金がもらえる」という話を持ち掛ける。

映画『運び屋』特報【HD】2019年3月8日(金)公開

登場人物

アール・ストーン(Clint Eastwood)
注目を浴びることと楽しむことが大好きな90歳。かつてはデイリリーの栽培に情熱を注いでいたが、農場が差し押さえになり立ち退きを迫られ、軽い気持ちで運び屋の仕事を始める。運んでいるものが麻薬であると知ってからも、手にした大金を孫や友人のために使って感謝されることに味をしめ、積極的に仕事を引き受ける。物怖じしない陽気な性格から、カルテルのメンバーから親しみを込めて「タタ(おじいちゃん)」と呼ばれるようになる。

コリン・ベイツ(Bradley Cooper)
DEA(麻薬取締局)の優秀なエージェント。大量の麻薬を運ぶ「タタ」の存在に目を付け、逮捕に向けて着々とカルテルに迫っていく。

メアリ(Dianne Wiest)
アールの前妻。家庭をないがしろにし続けたアールに心底失望しているものの、家族への罪滅ぼしを始めた彼に対して愛情を再確認し始める。

アイリス(Alison Eastwood)
アールの娘。学校の行事のみならず結婚式までもすっぽかした父に対して、強い怒りと嫌悪を抱き続けている。娘ジニーの結婚を機に家族に戻ろうとするアールにも厳しい態度をとる。

フリオ(Ignacio Serricchio)
カルテルのメンバー。ボスのレイトンから、運搬量が増えたアールの監視につくように命じられる。決められた時間やルートを守らずドライブを楽しむアールに苛立ちを募らせていたが、次第に親しみを抱くようになる。

根底に流れる切なさが噴出するクライマックス…“おバカ”なアールに苦笑と涙が止まらない一作。

巨匠の作品、というと少し構えてしまいますが、素直に楽しめました

イーストウッド作品は2作目なので「ここがさすが!」とか「イーストウッドならでは」とかはよく分からないけど、先が読めるのにグッとくるというのは、さすがと言えるポイントと思います。

デイリリーの儚さを体現するアールおじいちゃん

「最初は楽しげ→暗雲が立ち込める→暗い現実を突き付けられる」という流れは、アールが運び屋を始める気軽さを見ればすぐ読めます。

普通に年を重ねれば、あの車屋でガレージの中に閉じ込められた時点で、かなりやべー状態なのはわかるはず。
それなのにアールおじいちゃん、ちょっとビビってはいるものの平気な様子でドライブを楽しむ。かなり分厚い札束にまたビビり「二度とやらないもん!」と宣言するものの、お金のパワーに負けてまた走る。ブツが麻薬だと知っても、警察犬を連れた警官にバレそうになっても、その時々でビビるだけで引きずらない。

もともと華やかな場が好きで、周囲を楽しませ注目されることを何よりの喜びとするアール。
家族に邪険にされ孤独だった日々から、手にしたお金で孫や友人を喜ばせ感謝される日々にジャンプしたことで、その快感に溺れてしまうわけです。お金という麻薬にハマってしまったんですね。

孤独な人間が犯罪に手を染める…というだけなら、いくらでもありそうな話。この映画が一味ちがうのは、アールが本当に罪悪感を感じてなさそうなところ。
「カルテルとかよく分かんないし、お金いっぱいくれるし、それでみんなと楽しめるならいーじゃん」と言わんばかりに、すごく楽しそうにしている。カルテルのメンバー、そしてボスですら、「ブツが無事に届けばいーじゃん」みたいなノリになってくる。
アールがドライブ中に聴くカントリーミュージックと、アメリカの田舎の雄大な景色も相まって、すごくのどかで陽気な雰囲気に満たされる。

いや、これ、重大犯罪ですよね…?運んでる量ハンパないし…。

と気を取り直そうとしても、アールにつられてのんびりムード。
逆に言うと、徹底して明るく描かれることで、この状況が非現実的で儚いものなんだという空気も出ています。
1日花開くとすぐにしおれてしまうというデイリリー。アールの日々は、この短い華やかさを体現しているようです。

犯罪の切なさが溢れ出る後半は、痛々しさがすごい(ネタバレあり)

カルテルのボスの豪邸に招かれパーティを楽しむほどに重宝されるようになったアール。
お金にモノをいわせて家族にも取り入り、前妻メアリは微妙に心を開き始めたかも…

という段階で、一気に暗雲が立ち込めます。
カルテルのナンバー2がボスを殺し、アールの仕事をコントロールし始める。時間厳守、ルート厳守。今までのようにのんきなドライブは楽しめません。
そして前代未聞の量の麻薬を運んでいる最中、メアリが倒れたと連絡が入ります。

厳しい現実の中に放り込まれたアール。前半と打って変わって悲壮感がすごい(笑)。
しわくちゃで痩せ細ったおじいちゃんが打ちひしがれる姿は、それだけでも涙を誘いますね~。犯罪者ではあるけど、やめてあげて~と同情必至です。

というのも、やっぱりアール、おバカなだけで悪い人じゃないんですよ。よく言えばひたすら天真爛漫、悪く言えばひたすらバカ正直。
だからこそ、家族やカルテルメンバー、そして観客の心に良くも悪くも何かを引き起こす。バカな子ほどかわいいとおじいちゃんに言うのも変だけど(笑)、愛すべき人物なんです。
中途半端なキャラクターでは、前半から後半への急降下もここまで痛々しくならなかっただろうな~。単純な展開だけに、アールのキャラ設定が秀逸だなと思いました。

まとめ

この物語はおじいちゃんが主役ですが、根底に流れる悔恨は多くの人に共通するものだと思います。

お互いの素性を知らずにカフェで出くわしたアールとコリン。
家族を大事にしてこなかったことを悔やむアールを見つめるコリンの瞳が印象的でした。

ちょっとした話

この作品、宣伝にもあるように、New York Timesに掲載された記事が基になっています。

There’s a True Story Behind ‘The Mule’: The Sinaloa Cartel’s 90-Year-Old Drug Mule (Published 2014)
Is Leo Sharp a senile day-lily farmer who was taken advantage of by drug smugglers? Or did he know exactly what he was getting into?

アールのモデルとなったLeo Sharpというおじいちゃん。どんな人なのかな~と思ったら、アールばりに豪胆というか陽気というか…伝説になるだけあります(笑)
「この役は自分で演じたかった」というイーストウッド監督。ぜひ劇場でどうぞ!

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