これぞ韓国映画の本格サスペンス!「チェイサー」感想&ネタバレ

こんにちは!気付けばもうすぐ2月ですねぇ。
今回は、「頭のおかしい人と関わるのは本気で極力避けた方がいいね…」とグサグサ痛感する作品でした。

作品情報

チェイサー(原題:추격자)

制作:韓国、2008年
監督・脚本: 나홍진 (ナ・ホンジン)
メモ: 「哭声」のナ・ホンジン監督による、 韓国で起こった事件をベースにした超ダークなクライムサスペンス!

あらすじ

元刑事でデリヘル経営者のジュンホは、雇っている女性が立て続けに失踪したことに憤っていた。そんな中、ある男にシングルマザーのミジンを派遣するが、その男の電話番号が失踪した女性たちのお客の電話番号と同じであることに気付く。
その男が女性たちを売ったと考えたジュンホは、制裁を加えるべくミジンの後を追う。ミジンとの連絡が途絶え焦るジュンホであったが、偶然出くわした若い男が問題の男であることに気付き―

映画 チェイサー 予告編

登場人物

ジュンホ(김윤석、キム・ユンソク)
元刑事で機動捜査隊に属していたが、現在はデリヘルを経営している。暴力的で威圧的である。当初は女性たちが手付金をもって逃げたと考えていたが、電話番号をヒントに客の男性を疑い始め、個人的に制裁を加えるべく調査を始める。

ヨンミン(하정우、ハ・ジョンウ)
一見したところ普通の男だが、住人を殺して奪った豪邸にデリヘル嬢を呼び、頭に杭を打ち込んで殺害することを繰り返している。豪邸近くで出くわしたジュンホに正体がばれ、捕らえられた後に連れて行かれた警察署で、何気なく連続殺人を告白する。

ミジン(서영희、ソ・ヨンヒ)
ジュンホの店で働くデリヘル嬢。7歳の娘をひとりで育てている。風邪で仕事を休んでいたがジュンホから出勤を強要され、ヨンミンに捕らえられてしまう。

イ・ギル(정인기、チョン・インギ)
ジュンホの先輩である刑事。ヨンミンの罪を暴こうと奮闘するが翻弄されてしまい、暴走するジュンホを利用しようとする。

ウンジ(김유정、キム・ユジョン)
ミジンの娘。家に独りでいたところにジュンホがやってきたことで、母ミジンの捜索に同行することになる。

怒りと悲しみがこみ上げる…緊張感に満ちた韓国クライムサスペンス。

「哭声」を見てからすっかり気になる存在になったナ・ホンジン監督。
とりあえず長編デビュー作を見てみよう!と軽い気持ちで見てみたら、グサっと刺されてしまいました。

圧倒的な緊張感を生み出す、容赦ない暴力描写

冒頭からちょっとショッキングなシーンから始まるこの作品。

ジュンホの店の女性が客のオヤジに撮影されそうになり、怒って拒絶したことで暴力を受けます。
ジュンホは駆け付けるものの、女性を傷付けたことを理由にオヤジからお金をせしめることにしか興味がない。

このシーンがあることで、ほとんど何の準備もなく、彼女たちがどれほど危険な立場にあるのかを突き付けられます。男性がどう感じるかは分からないけど、同じ女としては本能的にすごーくイヤな緊張感の中に放り込まれる。
そして、この先ユーモアはほとんどなく、どんどん闇の中に突き進んでいきます。

闇、というは、まさしくヨンミンの住処である豪邸
異様に厳重な門の施錠と、やせ細った犬に怒鳴りつけるヨンミン。あれだけで、この家はこの男の家じゃないんだとわかる。だけど、客の手前ミジンは帰ることができない。
あーやめてやめて何もしないで…と思わず祈ってしまいました。


そして、わたしの祈りもむなしく(当たり前だけど)、本作における大ショックシーンがやってまいります。
下着姿で縛り付けられ、不気味な風呂場に放り出されたミジン。ヨンミンは泣き叫ぶ彼女の頭に、金槌で鉄の杭を打ち込もうとします。

これはもう、言葉にならないくらい恐ろしい
カメラがミジンの頭部を捉えて離れないんだもん、見るしかないじゃん!!うわー!!(泣)
ミジンの前に何人の女性が、人知れずこんな恐怖を味わって死んでいったんだ…と思うと、この時点で最悪の気分。「アメリカンスナイパー」で子どもの頭にドリルするシーンくらい暗澹たる気分になりました。


その後、ジュンホがヨンミンをしつこくボッコボコにするシーンもあり、それもそれで「ガチで殴ってるんじゃないの?」というくらいリアル。
邦画ではなかなか見られない本気の暴力描写のオンパレード。参りました…。

希望と絶望が交錯し、胸が引き裂かれる展開

ジュンホは、ミジンの後を追ってヨンミンの豪邸の近くまでやってきます。でも、家がどこなのか分からない。
すぐ近くにいるし、ジュンホはヨンミンをボコる気満々なのに、どこにいるか分からない…!!このもどかしさが、この作品の絶望感を作り出す重要な要素です。

ジュンホと共に警察に連行されたヨンミンは、あっさりと連続殺人を自供する。だけど、それ以上のことを明かそうとしない。今まで警察が取り逃がしてきた連続殺人犯が目の前にいるのに、証拠が出なければ釈放しないといけない。

重傷を負いながらもなんとか生きていたミジンは、割れたタイルを使って縄をほどき、なんとか外に逃げ出す。近くの商店に助けを求め匿ってもらい、ジュンホに電話するも、ミジンを探し回っているジュンホは電話に気付かない。
そして、証拠不十分で釈放されたヨンミンは、たばこを買いに商店に立ち寄り―


この映画のすごいところでもあり、同時にとてもむごいところは、被害者が恐怖に支配され、心身ともに苦しみながらも生きていたいと切に願い、命からがら脱出すらするのに、希望を無残に打ち砕かれる様子がガッツリ描かれているところ。
ミジンの恐怖や必死さを見ることで、警察やジュンホといった救う側の真剣さが全然足りていないことに怒りすら感じる。でも、この映画で警察が特別ひどく描かれているわけではなく、ヨンミンを逮捕しようと必死になってはいるんです。「それでも足りない」と思うほどに、被害者ミジンの恐怖がしっかりと描かれています。

ナ・ホンジン監督は、ソウルで実際に起こった20人連続殺人事件と、2004年に発生したイラク人質事件をモチーフにこの映画を作ったそうです。インタビューでは、「生き残りたいと切に願う被害者に対して、周囲の人たちはそこまで真剣に考えていないのでは」という思いがあったと話しています。
被害者ミジンを通して他人の死を目の当たりにせざるを得ないという意味で、監督の意図はバッチリ伝わってきました。

まとめ

連続殺人犯を追い詰める映画だろうという予想で見始めたこの映画。
蓋を開けてみると、冒頭で客から暴行を受ける女性に始まり、ミジン、そして母を失うウジンと、被害者側を丁寧に描いた作品でもありました。

ミジンを見て何も感じない人は、サイコパス確定です!

ちょっとした話

「チェイサー」では最凶サイコパス・ヨンミンを演じたハ・ジョンウ。何を考えてるか分からず、ニタニタしている姿はとっても不快でした(笑)
そして、すっかり腐り切ったかと思いきや、ウジンの存在で人間に戻るジュンホを熱演したキム・ユンソク。渋かったですね!

そんなお二人、実はナ・ホンジン監督の2作目「哀しき獣」でも共演しています!この作品では、キム・ユンソクがハ・ジョンウを操る側です。絶対に見ないと!!

『哀しき獣』 予告編

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