夫婦の絶望“レボリューショナリー・ロード”感想&ネタバレ

珍しくラブストーリー、と思ったら大火傷を負う、衝撃的な一作。

作品情報

レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで(原題: Revolutionary Road)

制作・公開:米国&英国、2008年
監督:Sam Mendes(英国、1965~)
メモ:“Revolutionary Road”に住む若い夫婦の絶望と崩壊の物語

<受賞>
ゴールデングローブ賞主演女優賞(ドラマ部門):ケイト・ウィンスレット
サテライト賞助演男優賞:マイケル・シャノン
セントルイス映画批評家協会賞主演女優賞:ケイト・ウィンスレット
バンクーバー映画批評家協会賞主演女優賞:ケイト・ウィンスレット

あらすじ

1950年代のアメリカ。港湾労働者のフランクと、女優を目指すエイプリルは、パーティで出会い夢について語り合い恋に落ちる。のちにフランクは、父親が20年間務めた機械会社に就職、エイプリルは妊娠し、二人はニューヨーク郊外の「レボリューショナリー・ロード」の庭付き一軒家で生活を始める。二人に家を紹介した不動産業者のヘレンや隣人のミリーシェップ夫妻から見ても、二人は“特別な”美男美女カップル。しかし、育児のために女優の夢をあきらめたエイプリルは不満を溜め込んでおり、フランクも「こうはなりたくない」と思っていた父親と同じ人生を送っていることに退屈しており、二人の仲は悪化していた。
エイプリルの市民劇団の公演が失敗に終わった後日、エイプリルは、昔フランクが「パリでは皆が本当に生きている」と話していたことを思い出す。閉塞感に満ちた現状から逃れるため、エイプリルは一家でパリに移住することを計画し、フランクも次第に乗り気になる。周囲には呆れられながらも「私たちは特別」と盛り上がる二人は活気を取り戻し、一家は希望に満ち溢れていた。しかし、エイプリルの妊娠が発覚。さらにフランクに昇進の話が持ち上がり、パリ移住計画をあきらめることになり―

Revolutionary Road Theatrical Trailer HD

登場人物

フランク・ウィーラー(Leonardo DiCaprio;レオナルド・ディカプリオ)
機械会社の販売部門に勤めるサラリーマンであり、2児の父親。若い頃は夢を語っていたが、現在は仕事に精を出すわけでもなく、浮気をしたりして退屈をしのいでいる。エイプリルのパリ移住計画に難色を示すが、「あなたは特別」「あなたに自分を取り戻してほしい」との激励に感動し、エイプリルへの情熱も取り戻す。しかし、会社を辞めるつもりで適当にやった仕事が評価され、新しいプロジェクトのメンバーに抜擢されたことから、現状維持に心が揺れ始める。

エイプリル・ウィーラー(Kate Winslet;ケイト・ウィンスレット)
フランクの妻であり、2児の母。若い頃は女優を目指しており、他の男とはちがって希望に満ちたフランクに魅力を感じ、恋に落ちる。昔思い描いていた人生とかけ離れた日常に強い不満を感じており、安定的な生活に甘んじているフランクに度々怒りを爆発させてしまう。パリに行けばフランクも魅力を取り戻すだろうと移住計画に躍起になり、妊娠が発覚した際はフランクに内緒で中絶を計画する。

シェップ・キャンベル(David Harbour;デヴィッド・ハーバー)
ウィーラー夫妻の隣人。フランクと同じく普通のサラリーマンであり、4児の父親。妻ミリーとの仲は良好だが、密かにエイプリルに好意を寄せている。

ミリー・キャンベル(Kathryn Hahn;キャスリン・ハーン)
シェップの妻。明るい性格で、ウィーラー家の子どもの面倒もよく見てくれているが、エイプリルに対して少しばかり劣等感を抱いている。

ヘレン・ギヴィングス(Kathy Bates;キャシー・ベイツ)
ウィーラー夫妻にレボリューショナリー・ロードの家を紹介した不動産業者の老婦人。ウィーラー夫妻のことを「特別」と言って気に入っている。精神疾患を抱えた息子ジョンの相手をしてくれないかとエイプリルに依頼し、快諾された後は、夫ハワードと息子ジョンと3人でウィーラー家を訪問するようになる。

ジョン・ギヴィングス(マイケル・シャノン)
ヘレンの息子。数学の才能があったが、精神病院に入院させられ狂人扱いされることで、半ば人生に絶望している。ウィーラー家のパリ移住については唯一の理解者であったが故に、計画断念の報告を聞いた際には激怒し、フランクを激しく罵倒する。

他人に夢を託しちゃあかんな~…と痛感する、夫婦のきっつい現実の姿。

個人的にとってもタイムリーな映画となりました(笑)

これは、大人が見れば誰でも「あるある」になり、蓋をしていた自分のクサい部分をほーれと突き付けられるような映画だと思います。関係崩壊中か崩壊後に見ると、かなりグッとくるかと。カップルって色々あるけど結局愛してるわダーリン♡モードの方は、今は見ない方がいいですね。

エイプリル側に立つかフランク側に立つかで、自分の現状がどんな感じか客観的に把握できるという、映画診断に使えそうな一作。わたしはエイプリル側に立つことが多かったので、狂気の沙汰に向かっていく彼女を見ながら「相手に幻想を抱いちゃあかんな」と反省することができました。どうもありがとうございます(笑)

ほんとに、幻想って恐ろしいの一言に尽きる。フランクもエイプリルも、「自分は特別だ」という幻想に囚われて破滅したのだ。

フランクは、言ってしまえば中身は空っぽのバカである。一家の大黒柱としての役割は果たしていて、ある程度現状と折り合いをつけてはいるけど、「本当のオレってこんなんじゃない」という幻想から抜け切れずにいる。だから、エイプリルに「“男”じゃない」と罵られれば図星だから激怒するし、自分に気のありそうな若い女性に手を出す。逆に、エイプリルに「あなたは“男”だわ」と励まされれば、でれーっと恋する少年モードに戻って舞い上がり、周囲の男性を見下し始める。彼は中身のない幻想から抜け出せないがために、エイプリルの幻想に簡単に操られているのだ。「褒めてくれる女じゃないとイヤだ」とかほざく男が、まさしくフランクである。

ここで、エイプリルのパリ移住計画の対抗馬として登場するのが、「会社での評価と昇進」である。パリで自分探しなんかしなくても、昇給と新しいプロジェクトという現実的な“自分の価値”が手に入ることになった。ここであっさり、彼は現実を選択する。彼が欲しいのは「努力して手に入れる本当の自分」なんかではなく、「自分は特別だ」という幻想を維持してくれる“何か”である。今まではエイプリルしかいなかった、というだけなのだ。

エイプリルは、いちおう女優を目指していたという点で、フランクよりは自我がある。その他大勢のひとりになりそうな日常がイヤで、市民劇団を立ち上げたりと行動もしている。しかし、女優として特別にはなれないことが分かると、その矛先をフランクに向けてしまうのだ。フランクよりも切実度が高いだけに、彼女は簡単にフランクに幻想を見せることに成功する。「フランクが特別な男になってくれれば、わたしも特別になれる」という理論。主婦の彼女には、もうそれしか残っていない。彼女は強迫的にパリ移住を押し進めようとし、授かった新しい命ですら捨てようとする。「パリに行かなければ、わたしは特別になれない」からだ。なりたいのは、平凡な3児の母ではないからだ。

しかし、パリ移住計画は、フランクの心変わりであっけなく無に帰す。彼女の幻想は、フランクのせいで打ち砕かれたのだ。

彼らは幸せになりたかっただけだし、特別な存在でいたいと思うのは悪いことではない。なのに、どうしてこんなにも無様で愚かに見えるのか?おそらく彼らには、特にフランクには、ジョンが言うところの“絶望を感じる勇気”がなかったのだ。切実じゃないのに、幻想にしがみついているからだ。

そういう意味で、パリ移住に懸けたエイプリルは絶望は深い。少なくとも彼女は幻想を現実にしようと行動していた。だからこそ、何も努力していない夫に孕まされて夢を奪われたと絶望し、最後の行動に出たのである。

エイプリルは、馬鹿な夫に夢を託したばかりに、自分の幻想を失い絶望する。フランクは、努力を必要としない幻想維持を選んだ結果、エイプリルを失う。彼の幻想を支えた女性は消え、仕事と子育てという現実が彼にのしかかる。主婦になり夢をあきらめたエイプリルの失望と、パリに懸けたエイプリルの希望が、やっとフランクに届いたのではないだろうか。

という感じで、やっぱりエイプリルのほうが切実だったよなーとエイプリル寄りになっちゃうんだけど、他人に夢を託しちゃダメ!絶対!という結論に至りますね。

エイプリルも、もうフランクなんて見切って、何か新しいことを見つければよかったんですよ。エイプリルの時代はそれも厳しかったかもしれないけど、今エイプリル状態になっている人には「他人を頼っちゃいかん!」と声を大にして言いたい!というか自分、目を覚ませって感じでした(笑)

夫婦とか男とか女とかに関係なく、「相手がこうしてくれたら自分の夢は叶うのに」状態になってはいけません!絶対危険!

ちょっとした話

本作の制作当時、主演ケイト・ウィンスレットの夫でもあったサム・メンデス監督。人間の暗部をえぐるような作品が多いみたいですね。007スカイフォールの監督でもあるようで、これはわたしの好きな人かも!
アカデミー賞とゴールデングローブ賞を受賞した「アメリカン・ビューティ」(米国、1999年)も、家族が崩壊していく様子を描いた作品だそう。要チェックの監督ですね!

American Beauty – Trailer

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