軽妙に暗部を晒す!山田ルイ53世『ヒキコモリ漂流記』レビュー

世間ではNHKに対する風当たりが強いようですが、わたしはもっぱらEテレを楽しんでいます(笑)

先週の「SWITCHインタビュー 達人達」は、お笑いコンビ髭男爵の山田ルイ53世×動物学者・今泉忠明という組合わせ。
なぜに山田ルイ53世?と興味津々で鑑賞したところ、なにやら最近は執筆活動で注目を集めているとのこと。個人的に髭男爵の漫才は結構好きなんだけど、すっかり見る機会が減ったなぁと思っていたら、いつの間に!しかも思春期に6年間も引きこもっていたというから驚き。

ということで、さっそく『ヒキコモリ漂流記』を読んでみました。
何にでもポジティブな意味を求められる風潮に違和感を抱いている人にぜひ読んでほしいです。

著者概要

山田ルイ53世

1975年兵庫県生まれ(キャラとしてはパリ・シャンゼリゼ通り生まれ)。 お笑いコンビ・髭男爵のツッコミ担当。
地元の名門中学校に入学するも、中学2年の夏休み後から不登校、引きこもりとなる。20歳のときに大検合格を経て愛媛大学法学部に入学するも、芸人を目指して中退し上京。下積み生活を経て貴族漫才でブレイク。2017年に「新潮45」で連載していた『一発屋芸人列伝』が話題となる。現在はテレビ、執筆、ラジオなど幅広く活動中。

<受賞>
・編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞・作品賞(『一発屋芸人列伝』)

作品概要

ヒキコモリ漂流記 完全版

発行:角川文庫、2018年(2015年刊行の『ヒキコモリ漂流記』に加筆訂正、改題した文庫版)
ジャンル:エッセー
メモ: 予想以上の屈折っぷり!神童時代からの転落と本心を赤裸々に綴った笑撃の回顧録。

序章  引きこもりの朝
第1章 神童の季節
第2章 地獄の通学路
第3章 引きこもり時代
第4章 大学での日々
第5章 下積みからの脱却
第6章 引きこもり、親になる

後悔を抱えて生きていく―軽妙に暗部をさらす芸人の手腕を味わえる一冊

「ルネッサ~ンス!」でお馴染みのお笑いコンビ・髭男爵。そのツッコミ担当、太っている方が山田ルイ53世です。
この本は、山田氏の中学2年~20歳までの引きこもり時代、そこから脱した大学時代、そして東京での下積み時代を赤裸々に綴った回顧録になっています。

この本の面白いところは、山田氏のクズっぷりが惜しげもなく披露されているところ。こんなに暗部を曝け出しているエッセーは珍しい(笑)

引きこもりが始まった直接の原因だけを見れば、「そんなに恥ずかしい思いをして、可哀想に…」と同情してしまう。
しかし、序章の「無駄な段取り」を読むと「この子、破裂寸前の何かを抱え込んでいる…」と狂気を感じざるを得ない。さらに「神童の季節」を読むと、彼がいかにして引きこもりに至ったのかがよく分かる。幼児のときから着々と、“神童感”という自意識過剰の風船を膨らまし続けていたのです。

中学2年のときに起こったお漏らし事件、そして父親からドロップキックを受けたことで、山田氏の風船はパチンと弾ける。そこから長い長い引きこもり生活が始まるのでした。

子ども時代の暗部もなかなか興味深い。親や教育関係者は一読の価値ありです。
しかし大学時代から下積み時代にかけて、さらに深~い闇に向かっていく山田氏。引きこもりから脱却した後もずぶずぶと沼に沈んでいきそうな不安定さ、予想外の迫力でした!

引きこもりが終わって、晴れて明るい世界に!というわけではないんだね。

長い時間をかけて屈折したものって、そうそう簡単に直らないんだよね。
大学時代にコンビを組んだ金丸くんとのエピソードの中で、山田氏が「自分は人生を軽く扱っている」と気付く場面があります。ここは自分と重なってしまって、かなりグサっと刺さりました。

ポジティブ中毒に疲れた人たちへ

有名人の自叙伝って、「苦しい日々があったから今がある」という感動ポジティブ展開に落ち着くものが圧倒的に多い。業界的にナルシシズムの強い傾向があるかもしれないけど、何でも(ときには犯罪までも)美談にしたがるんですよね。

そういう意味でこの本はすごく特異です。山田氏が人生あっぱれモードに入っている部分はほとんど描かれていません
ラストの「引きこもり、親になる」でやっと小さな光が見える程度で、この章の分量も見開き3.5ページという少なさ。娘さんが生まれてなかったら、かなり不安の強いラストになっていたことでしょう(笑)

あとがきにもあるように、山田氏はハッキリと引きこもり時代を後悔しています。それを表明しているところに、リアリティと潔さを感じました。

何にしてもポジティブに捉えないといけないって風潮が強くてウザいよね

あらゆる行動や選択に対して、意味を見出せとか得るものがあったはずだとか押し付けられるの、ほんと疎ましい…。
成功は成功だし、失敗は失敗で消せるわけじゃない。だけど生きていく。それでいいじゃないか。ポジティブ中毒に陥っている世界に違和感をもっている人は、肩から力が抜けるのを感じるはずです。

まとめ

文庫版あとがきの最後の言葉、「僕は大丈夫だ」。深くやさしく染みわたりました。
暗部を面白おかしく描く山田氏の手腕を堪能してください!

ヒトってシンプルに生きられない生き物なの?

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