
パク・チャヌク監督の傑作「オールドボーイ」を見たので、やっぱり原作もチェックしないとね~ということで。
作者概要
【作】土屋 ガロン
1947年東京生まれ、2018年没。別名・狩撫麻礼(かりぶ まれい)。
1979年、『シリーズ輪苦の長い旅 ザ・リミット』(画・ 園田光慶)、『East of The Sun, West of The Moon』(画・大友克洋)でデビュー。’85年「漫画アクション」に連載した『ア・ホーマンス』(画・たなか亜希夫)が松田優作主演・監督で映画化された。世間から少し外れたところで生きている男たちを描いた作品が多い。
【画】嶺岸 信明(みねぎし しんめい)
1959年宮城県生まれ。『天牌』など、麻雀劇画を中心とした作品を多数発表している。
作品概要
ルーズ戦記 オールドボーイ
発行:1997~’98年(全8巻)、双葉社ACTION COMICS
ジャンル:漫画
メモ:パク・チャヌク監督の傑作映画の原作。10年間にわたる監禁の理由とは?
男はテレビとベッドしかない部屋に10年間監禁されていたが、ある日突然解放される。誰が何のために自分を監禁したのか、全く見当がつかない。立ち寄った居酒屋で出会ったエリという娘の部屋に身を寄せた男は、自分を監禁した“何者か”と対決すべく行動を開始する。そして、そんな男を尾行し監視し続ける謎の男たちがいた。
自分を陥れた闇の謎に“ルーズ”に迫る、男くさくてスタイリッシュなサスペンス漫画
はい、面白かったです!!
さすがは傑作映画の原作になっただけありますね。
映画「オールドボーイ」は原作に忠実なのかな?
映画に踏襲された設定は以下のとおり。
・普通の男が突然拉致され、テレビとベッドしかない部屋に長年監禁される。(漫画では10年、映画では15年)
・監禁中の食事は中華料理である。
・男は監禁中に体を鍛え、ケンカに強くなる。
・解放された後に若い女と出会い、男女の関係となる。
・解放後も謎の男たちに尾行・監視される。
(※ラストのネタバレ部分の共通点は割愛してます)
こんな感じで、「基本設定が同じだけ」です。
映画では冒頭で男(オ・デス)がどんな男か分かり、監禁中に妻が殺されその犯人にされてしまうという、ドラマティックな展開。解放された男は復讐に燃える。
2時間の中で起承転結をつけるためか、全体的にショッキングで分かりやすい脚色をしたんですねぇ。
一方この漫画では、監禁された男が誰なのかも途中までよく分からない。3巻の中盤まで本名すら明かされなという(笑)
自分を監禁した人間に対する恨みはあるし、真実を知るために行動を始める。しかし映画のようにドドドっと動き出すのではなく、自分を尾行している敵と駆け引きしながら“ルーズ”に対峙していきます。
新宿ゴールデン街のバーを拠点にしていることもあり、アウトサイダーの匂いがぷんぷん漂ってくる!
ハードボイルドで男くさくて、それでいてクールという、とてもかっこいい漫画でした。
ほほう。じゃぁ拉致監禁の動機もちがうんだね。
そうそう。映画では事件ともいえるひとつの出来事が発端になっているけど、 この『ルーズ戦記』では犯人の内面に根差した闇が原因になっています。
完全に犯人の個人的な事情なので、何が原因なのか全く分からない!
犯人が男に恨みをもつきっかけとなった出来事も、「そこでそんなに怒るの⁈」と思ってしまうような日常的なこと。わたしは登場人物たちと一緒に愕然としました(笑)
こういう理解を超えた存在が悪役になっている作品は多いけど、この作品みたいに内面の描き方がバランスよくて切なさを感じる作品は珍しい。
大体は完全なる悪として描かれるか、「ユリゴコロ」みたいなダッサイ仕上がりになってるかのどちらかなんですよね。
もう仕方ないと諦めていたことを思わぬ形で誰かに蒸し返されると、「どうして今さら!」と苛立ちを感じてしまう。それが自分にとって重大であればあるほど、怒りは大きく深くなり引きずってしまう。捨てたはずの可能性が蘇って揺れてしまうから。そうやって自分を惑わせた人間が、自分を忘れて普通に生きているなんて許せない…。
異質な存在として生きる犯人だからこそ抱いた憎しみ、そしてある種の憧れ。全体的に文字の少ない漫画だからこそ、男と犯人の会話はじっくり読むことをオススメします。
まとめ
映画よりもじっくりと、男と犯人の駆け引き、 そして深い深い謎と闇を楽しむことができました。
アウトサイダーな主人公たちと一緒に結末までの道のりを楽しんでください!

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