動機不明の完全犯罪⁈「八つ墓村」感想&ちょっとネタバレ

金田一耕助シリーズの第4弾です!
完璧な舞台、秀逸なキャラクター設定…エンターテイメントとして最高のミステリでした。

作者情報

横溝 正史(よこみぞ せいし)

1902年兵庫県生まれ。1981年東京都で死没。
’21年、雑誌『新青年』の懸賞に応募した『恐ろしき四月馬鹿(エイプリル・フール)』が入選作となる。その後は薬剤師として働いていたが、’26年に江戸川乱歩の招きで上京し博文館に入社。いくつかの雑誌の編集長をしながら執筆活動を続け、’32年に同社を退社し専業作家となる。その後しばらくは病気や戦争で不遇な時期を過ごすが、’48年に『本陣殺人事件」を発表し人気が高まる。『八つ墓村』『犬神家の一族』をはじめとする金田一耕助シリーズが何度も映像化された結果、ミステリファン以外にも広く知られる存在となった。
1976年勲三等瑞宝章受章。

作品概要

八つ墓村

発行:角川文庫、2001年(1971年発行の同名文庫に基づく)
ジャンル:小説
メモ:金田一耕助シリーズ第4弾。八つ墓村で新たに起こる連続殺人は人間の仕業か、それとも祟りか?

八つ墓村と呼ばれる小さな村には、かつてこの村で惨殺された若武者と彼に仕える7人の男が祀られている。8人の死後、彼らを殺害した首謀者である田治見庄左衛門が家族や村人を切り殺し、自らの首をはねて死ぬという事件が起こったため、祟りを恐れた村人たちが急いで墓を建てたのである。しかし大正×年、田治見庄左衛門の子孫田治見要蔵が妻・鶴子の家出を機に発狂。32人の村人を虐殺し、行方不明となった。
それから二十数年、神戸に住む青年寺田辰弥は、諏訪という弁護士から何者かが自分を探していることを聞かされる。その直後、「八つ墓村へかえってきてはならぬ」という警告文を受け取り―

至極のエンターテイメント!だけど現代日本にもつながる闇が…

前回読んだ「犬神家の一族」よりもいろんな種類の恐怖が味わえて、ハラハラドキドキ!

舞台設定が最高すぎる

この小説は、発端→第1章~第8章→大団円の順に進みます。
このうち第1章~第8章、そして大団円は、寺田辰弥の手記という形をとっています。

では「発端」に何が?というと、八つ墓村が八つ墓村と呼ばれるようになった所以と、要蔵がどのようにして32人を殺すまでに至ったのか、が書かれています。
この2つの話、特に要蔵の話は本当にイヤ…汚い言葉を使わせてもらうと胸糞悪い。こんな男が近所に住んでたら即行で引越すぐらいに鬼畜。そして最後には32人も殺すという…

ほんとにこの村には行きたくないっ!!!

と思わずにはいられません。

こんな感じなので、第1章に入る頃にはしっかりと、八つ墓村に対する暗いイメージが刷り込まれているんですよねぇ。
イメージでは、日も当たらなくてずっと霧に包まれている灰色の村です。

さらには、辰弥が村に行く前の神戸でもひとつの事件が起こる。

え、行くなよ辰弥!どうして行く気なんだよ!
と友人なら絶対に止めますってレベルで嫌な感じしかない。

だからこそ!ミステリの舞台としては最高じゃないですか!!
何もなさそうな場所で突如…というのもいいけど、ベタベタの暗闇に突入していく恐怖っていうのはやっぱり鉄板ですよね。

“招かれざる客”辰弥の手記だからスリル満点

勘のいい人はすぐに気付くと思いますが、小説でも第1章で明かされますが、辰弥は鶴子の子どもです。
つまり、鬼畜の要蔵の息子、ということになります。

村人たちからすると、辰弥には憎き殺人鬼の血が流れているんです。
帰ってきてほしいわけがないですね。全然帰ってきてほしくない。

ということで、辰弥にはほとんど味方がいない
村の人たちは何を考えてるかよく分からないけど、自分を歓迎していないことだけは分かる。この閉鎖的で小さな村では、あることないこと噂はすぐに広まってしまう。それなのに自分の周りで次々に人が死んでいく!
なんという心細さでしょう!

いわゆる神目線で描かれていたとしても十分に同情できるであろうこの状況。
辰弥の手記の中で辰弥と同じ体験をすることで、よりハッキリと恐怖を味わうことができます。

特に彼が地下洞窟に逃げ込んだ後なんて、スリラーのようなハラハラもたっぷりです。
人生いろいろ、恐怖もいろいろです。

八つ墓村って現代日本の縮図かもしれない

犯人のサイコパスっぷりは見事なものでした。これぞサイコパスって感じ。
横溝氏がこのような人種を意識していたかは分からないけど、現代で言われているサイコパスの特徴にしっかり当てはまってるのを見ると、いつの時代もサイコパスっているんだなぁとしみじみしちゃいます。

もうひとつ「現代にも当てはまるなぁ」と眉をひそめてしまったのは、辰弥に襲いかかる村民たちの描写。
かつて要蔵に家族を殺された人はまぁ仕方ないとして、そういう人たちに扇動されて“なんとなく”辰弥を襲いに来る人たち。

これって、当事者でもないのに正義面して他人を叩きまくる現代の風潮に似てる。
そして当事者もそういうエセ正義マンに乗せられて、「わたしは完全なる正義です」と言わんばかりのドヤ顔で、人を傷つけるようになる。
“誰か”が事実かどうか分からない話を利用して無知な人々を煽り、目的を達成しようとする。

これって、今でいうフェイクニュースですよね。フェイクニュースに踊らされて、ヘイトスピーチしたり暴力をふるう人たちですよね。
本作の時代設定は昭和20年代なのに、現代の私たちも変わらないんだなぁ…と悲しくなりました。

という感じで、まったく古臭さを感じさせず胸に迫る作品でした。

まとめ

耕助の孫・金田一一が活躍する金田一少年の事件簿の中では、首狩り武者と秘宝島をミックスした雰囲気の八つ墓村。
地下洞窟で秘宝を探す場面もあり、一瞬たりとも退屈しません。

謎解き要素は薄めなので、ミステリ初心者にもオススメです!

ちょっとした話

金田一耕助シリーズは順番どおりに読もう!と思ったんだけど、うっかり4作目の八つ墓村を読んでしまいました。
というのも、角川文庫が出している金田一耕助ファイルというシリーズの順番が、作品発表順とちがうんですよね。なぜこんな分かりづらいことをしてくれたんだ、まったく!(角川のせいにする)

もう二度と間違いたくないので、10冊まで表にしてまとめておきます。まったく!(確認しなかった自分のせい)

作品発表順(長編)金田一耕助ファイル by 角川
本陣殺人事件八つ墓村
獄門島本陣殺人事件
夜歩く獄門島
八つ墓村悪魔が来りて笛を吹く
死仮面犬神家の一族
犬神家の一族人面瘡(中短編5作収録)
女王蜂夜歩く
悪魔が来りて笛を吹く迷路荘の惨劇
不死蝶女王蜂
幽霊男幽霊男
Amazon.co.jp: 八つ墓村 (角川文庫): 横溝 正史: 本
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