二度読みたくなっちゃう!「イニシエーション・ラブ」感想&ネタバレ

明けましておめでとうございます!2019年もよろしくお願いいたします。

今年のお正月は、火事を目撃したり亀を拾ったり、ちょっと妙な雰囲気。が、実家で大掃除したり、ごろごろしながら海外ドラマ「キャッスル」を見まくったり、親といっしょに紅白歌合戦を楽しんだり、しっかりリフレッシュしました~。
毎年恒例の読み初めも成功し、幸先いいです!

作者情報

乾 くるみ(いぬい くるみ)
生まれ:1963年静岡県
経歴:1998年に「Jの神話」で第4回メフィスト賞を受賞し、34歳で作家デビュー。2004年に刊行した「イニシエーション・ラブ」が、同年の「このミステリーがすごい」で第12位、「本格ミステリベスト10」で第6位と高く評価され、2005年に同作で第58回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)候補作となる。2007年に同作が文庫化されると、雑誌やテレビ番組などでたびたび紹介されロングヒットとなり、2014年4月に100万部に達した。

<主な作品>
イニシエーション・ラブ(原書房、2004年)、セカンド・ラブ(文藝春秋、2010年)

作品情報

イニシエーション・ラブ
発行:原書房、2004年
ジャンル:小説
<どんな本?>「読み終わった後は必ずもう一度読み返したくなる」と銘打たれた、80年代の空気感をたっぷり味わえる一作。

概要

(side-A)「僕」こと大学生の鈴木は、代役で呼ばれた合コンで出会ったマユに心を惹かれる。女性に対して誠実でありたいと思うがゆえに奥手になってしまい、なかなかマユに接近できない鈴木。しかし、後日同じメンバーで海水浴に行った際、ふとした瞬間にマユから電話番号を教えてもらう。2週間後、意を決して電話をかけ、電話を待っていたというマユとなんとかデートの約束を取り付ける。そして初デートで2人とも読書好きだということが分かり、毎週金曜日に会ってオススメの本を交換することになる。
(side-B)鈴木は、マユとの関係を優先し、東京の会社からもらった内定を蹴って地元静岡の企業に就職した。しかし、成績優秀な鈴木は、2年間東京の親会社に出向する選抜メンバーに選ばれてしまう。鈴木とマユは仕方なく遠距離恋愛を決意し、鈴木は毎週静岡に帰ってくることを約束する。始めのうちは、慣れない東京生活での疲れをマユに癒されていた鈴木。しかし、心身の疲労に経済的負担が加わり、徐々に疲弊していく。そんな中鈴木は、東京での同僚で見た目も中身も完璧な女性・石丸美弥子と仕事を通じて意気投合し、接近していく。

ちょっとした違和感でも見過ごしたら負け!の、練りに練られた恋愛ミステリー。

ネタバレなしだとほとんど話せない…というくらい、全てに伏線が張ってある逸品です。
「読み返したくなる」っていうのは、伏線を全部回収したくなる!ってことですね。ほんと読み返すの楽しかった~(笑)
読む予定のある方はぜひ前情報ゼロでどうぞ!

80年代トレンディドラマの空気感に油断してはいけない

大学生の鈴木が主人公であるside-Aは、一見ふつうの恋愛小説です。
普通の大学生が、ごくごく普通に普通の女性と出会い、恋に落ちていく。鈴木目線で進んでいくラブストーリーは、出会いから恋が成就し、さらに関係が盛り上がっていくまでの、普通の「恋の始まり」のドキドキが描かれたもの。本当に、何の変哲もないラブストーリーなんです。

「ん?」と思う程度のちっちゃい違和感がちょいちょい出てくる。だけど、若者の軽快な恋物語だし、80年代という自分にはよく分からない時代設定なこともあり、「そんなもんか」と流してしまう。これが全て、ラストに向けての伏線だということも知らずに…(笑)

というか、これは伏線なのか?と思ったところで、side-Aを読んでいる限りは1つも回収できないんですよね。side-Bに入ってしまうと記憶の片隅に追いやられる。そしてラストに、「あぁ!やっぱり伏線だったのか!」と膝を打つことになりました。まさに時間差攻撃

さらに、この80年代という微妙な時代設定こそが、本作のラストの驚きにいちばん貢献しているんですよね!
いや~時代設定まで利用しているとは考えてもみなかった…感服!!

女は笑い、男はゾッとするかも?! 女の計算高さに思わず拍手!

この作品は、終始鈴木の視点で話が進みます。マユはどんな女性かというのは、鈴木の視点からしか分かりません。ここがラストの肝でもあります。

<この先ネタバレ>

マユは、2人の鈴木に巧妙に二股をかけてました。
side-Aの鈴木とside-Bの鈴木は別人で、マユは鈴木Bと遠距離恋愛を始め破局するまでの間に、鈴木Aと出会い付き合い始めています。

side-Bに入ってからは、マユはかなり悲惨な状況に陥ります。鈴木Bとはろくに電話もできず、週末の静岡での時間も思うように楽しめず、挙句の果てに鈴木Bの子を妊娠、そして中絶。最後には、鈴木Bが美弥子と浮気していることを知り、なぜか逆ギレされて破局。鈴木Bからは今でいうモラハラや暴力を受けていたことも…。
side-Bだけ読む限り、つまり鈴木Bから見る限り、マユは超気の毒な女性なんです。

だけど…

マユが二股をかけていると知った状態でside-Aを読み返すと、マユはとっても気丈に、かつ巧妙に恋愛を楽しんでいます。中絶手術のせいで鈴木Aに会えなかったときには、「便秘で具合が悪かった」とサラッと誤魔化すほど(苦笑)
たしかに鈴木Bには傷付けられていたんだろうけど、それを鈴木Aには微塵も見せないくらいの豪胆さを持ち合わせている女性でした。

「夕樹」という名前の鈴木Aを無理やり「たっくん」と呼ぶのには、いささか違和感を抱いたんだけど、まさか彼氏である鈴木B(辰也)と同じ呼び方にするためだったとは…徹底しすぎで笑える(笑)
鈴木Bがマユと別れてから電話してしまったとき、平然と「たっくん?」と呼びかけるマユに戦慄するシーン。あれは読み返すと本当に笑えますね~。携帯電話が主流になってしまった現代では起こりづらい現象という点でも、とっても面白いシーンでした。

マユほどではないにしても、こっそりと色んな男をキープしている女は意外に多い。そして、本当に男にはバレないんですよね~。
読み返してマユの本性を見た後は、女同士で飲んだ後のような清々しさを感じました(笑) 乾さん、男性なのにこんなに女性の描写がうまいのには驚きだったな~。名前からして女性だと思っていたのでさらにビックリ…。

“イニシエーション”を成功させたのは誰か。

イニシエーション・ラブは、鈴木Bの浮気相手である美弥子の造語です。
彼女は、かつての恋人・天童に心底惚れて尽くしたものの、彼からは全くと言っていいほど愛情を返されなかった。そんな報われない恋愛に疲れ果てた美弥子に、天童は「この恋愛はオマエにとって通過儀礼=イニシエーションだったんだ」と告げました。
つまり、イニシエーション・ラブとは、次のステージに進むための「通過儀礼の恋」という意味です。

side-Bの登場人物、マユ・鈴木B・美弥子の中で、イニシエーションを成功さえたのは誰なんだろう。と考えると、さらにマユの強さが見えてくると思いました。

結果的に、マユは鈴木Aと結ばれ(鈴木Bと別れ)楽しいクリスマスを過ごします。
一方、鈴木Bは浮気相手の美弥子と交際することになるものの、どうも不穏な雰囲気。せっかく新しい恋が始まったのに、キラキラ感がない。

この違いは何だと考えてみると、鈴木Bも美弥子も、前回の恋を踏まえて成長するということをしていません。
美弥子は、自分に愛を返してくれなかった天童とはやっていけなかったと過去を振り返るわりに、自分を振った鈴木Bと半ば強引に体の関係をもちます。浮気を続けた延長で彼女に昇格したものの、喜んだり感動しているようには見えません。
鈴木Bは、美弥子を好きではあるけど愛してはいない。完璧な美弥子を彼女にしたことで次のステージに上がったような気がしているだけで、実際は美弥子に押し切られて浮気を続け、なんとなく付き合っているだけ。しかも、もはやストレスを感じ始めているという(笑) 飽きて面倒なことが起これば、マユにしたように、暴力やモラハラを始めるんじゃないかと思います。

一方マユは、自分のために努力してくれる鈴木Aを見つけ、仲を深める努力を楽しんでいる。鈴木Bに抑圧されていたときとちがって、対等な関係を築くように工夫しています。

マユのしたことは二股だけど、つらい恋を通過して、次は自分の幸せのために頑張っている姿には好感がもてました。
男からすればミステリーかホラーかもしれないけど(笑)、女のわたしからするとマユの成長ストーリーでもありました。

まとめ

サクッと読めておぉ!と感動し、読み返してさらに楽しめるという、とてもお得な作品です!巻末に80年代用語集もついているので、その時代を知らない年代でも楽しめます。
「揺れるまなざし」「君は1000%」など、章のタイトルになっている80年代のヒットソングを聞きながら読むのも面白いですよ♪

コメント

タイトルとURLをコピーしました