貞子“増殖”の真相とは?!「らせん」感想&ネタバレ

久々のリングシリーズ!
ブックオフでたまたま見つけ、即決購入。

作者情報

鈴木 光司(すずき こうじ)

生まれ:1957年静岡県

経歴:慶應義塾大学文学部仏文科卒業。大学卒業後は専業主夫をしながら自宅で学習塾を開き、1人で全教科を教えながら小説を執筆する。デビュー作の「楽園」が日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞、次作「リング」でジャパニーズホラーブームの火付け役となった。その続編である「らせん」は第17回吉川英治文学新人賞を受賞、2013年には「エッジ」で米国のシャリー・ジャクスン賞を受賞している。父親をテーマにしたエッセーも多く発表している。

代表作:「リング」シリーズ、「仄暗い水の底から」(角川書店、1996年)

<受賞作>
・楽園(新潮社、1990年):ファンタジーノベル大賞優秀賞
・らせん(角川書店、1995年):第17回吉川英治文学新人賞
・エッジ(角川書店、2008年):2013年シャーリイ・ジャクスン賞(The Shirley Jackson Awards)長編部門

作品情報

らせん

発行:角川ホラー文庫、1997年(同名単行本(’95年発行)の文庫版)
ジャンル:小説
誕生秘話:第17回吉川英治文学新人賞を受賞した、大ヒット小説「リング」の続編。「企画から発行まで5年近くかかった」という作者渾身の一作!

あらすじ

監察医の安藤は、約1年前に幼い息子・孝則を海で亡くし、絶望の中仕事だけをこなす生活を送っていた。ある日安藤が解剖を担当することになったのは、謎の死を遂げた友人・高山竜司の死体。解剖の結果、高山の冠動脈からは正体不明の肉腫が発見される。検死後、腹に新聞紙を詰めて縫合すると、なぜか新聞紙の一部がはみ出ていることに気付く。そこに書かれた数字を見て、安藤は大学時代に高山と競い合った暗号ゲームを思い出し、さっそく解読にとりかかる。その暗号が示す言葉は「リング」。さらに、謎の肉腫からは、根絶されたはずの天然痘ウィルスの存在が示唆され―

呪いの「ウィルス」増殖の真相とは?! これぞSFホラーの金字塔!

言わずと知れた大ヒット小説「リング」の続編でございます。
映画は、1998年に「リング/らせん」で同時上映されましたね。

当時小学生だったわたしも、金田一マニアの友人と2人で、父親に連れて行ってもらいました。貞子が井戸から出てくるシーンでうわー!となった後の、大人のムード漂う「らせん」。佐藤浩市演じる安藤と、中谷美紀演じる高野舞のラブシーンは、かなり気まずかった記憶がある。こんなはずでは…感がすごかった。内容もちょっと難しくて、当時はほとんど理解できてなかったと思う。

らせんの内容が理解できるようになったのは、大きくなってDVDを見てから。このときには年頃になっていたので、やたらに色っぽくてかっこよすぎな佐藤浩市に悶絶し、「これなら貞子になりたい」とまで思った(笑)そして、「貞子の呪いがウィルスになっていたのか」と、やっとこさ“呪いの増殖”の仕組みを理解できたのでした。

今回は原作小説、しかも文庫で文字ギッシリの400ページ!ということで、映画と異なるポイントを楽しみながら、さらに深く「リングウィルス誕生の謎」に迫ることができました。

小説の中の安藤は、頭の中ではもちろん20年前の佐藤浩市に置き換わってるんで、もうすっごく楽しかったですね~(笑)

この小説は、全体的にホラーのにおいはしっかりプンプンしてるんだけど、軸になっているのは、ビデオの犠牲者の死因の究明から始まるSFミステリー

安藤は、病理学教室の助手である友人の宮下と共に、「犠牲者から見つかった肉腫は何なのか」「なぜ浅川は死ななかったのか」という数々の謎を科学者の立場で解明しようとする。竜司から出された暗号を軽い気持ちで解いてしまったばっかりに、ずぶずぶと貞子の呪いに引き込まれ、本気にならざるを得ない状況に陥っていくわけです。

作者が苦労して約5年かけて作り上げただけあって、かなり緻密ながらスケールの大きい話で、大満足でした!

この独特のスケール感は、やはり、ごく小さな物質でありながらも生命の基礎となっているDNAによるものなのかなぁ。竜司から安藤に渡される暗号と遺伝暗号とがリンクしたり、遺伝子の突然変異が感染経路や“増殖”のしかたの変異にリンクしたり、壮大なのに散らかってない構成がお見事!の一言ですね。

ここまでガッチリしたミステリーに、違和感なくホラーを連動させるあたりがまた凄い。ちゃんと不気味でちゃんと怖い。

遺伝子やウィルスという普遍的な題材を扱っているから、20年経った今でもほとんど違和感なく楽しめる。さらに、貞子の恐怖はパンデミックの恐怖へと変貌を遂げ、さらには新種による覇権の恐怖へと向かう。これらもまた普遍的な恐怖だから、ただ「貞子怖いよー」というお化け話で終わらないのである。

爆発的に増殖するように改造されたウィルスが、誰かの憎しみのもとに世界にばら撒かれたらどうなるか。増殖の手助けをすれば最も大切なものを与えてやる、おまえの命は保証してやると持ちかけられたらどうするか。悪意が簡単に感染するように変化している現代こそ、「らせん」には唸らされますね…

<この先さらにネタバレ>

すみません、すでに微妙にネタバレしているんですが(笑)

映画を見たときは掴みきれなかったんだけど、小説を読んで、ほんとに凄い発想だよなぁと改めて感動しっぱなしでした。

井戸の底で「生きたい」と強烈に願った貞子の遺伝情報は、貞子の中にいた天然痘ウィルスと融合し、リングウィルスが誕生した。当初は貞子が念写したビデオしか感染経路はなく、増殖に手を貸さなかった(=ダビングして他の人に見せなかった)人間は死ぬことになった。

しかし、リングウィルスは突然変異を起こし、ビデオだけでなく、ビデオを克明に記録した浅川の手記も感染経路とできるようになる。さらに、それらの媒体に触れた女性が排卵日であれば、リングウィルスは卵を攻撃し“受精”させてしまう。受精から1週間後に産み落とされるのは、山村貞子。その貞子は完全な両性具有であるために単体で妊娠が可能であり、つまり、貞子は貞子を生むことができるのだ。

映画では、ビデオを見た安藤が排卵日の舞とセックスしたことで、安藤の体内のリングウィルスが舞の体内に入り込み、結果として貞子が生まれるという設定だった。貞子が生まれたのは偶然の出来事という描かれ方だったし、貞子が睾丸性女性化症候群との描写もない。なので、リングウィルスのパンデミックの危険性はそんなに感じられなかった。(映画も見直さないといかんな。)

一方、原作のこの設定。エグいですよねぇ…貞子の体の特徴がこんなふうに使われるとは…。ちなみに進化型リングウィルスに感染した男性はというと、リングの映像や手記を広めるように操作されることになります。なんか、カタツムリに寄生するロイコクロリディウムみたいですよね。

増殖は貞子の意志というよりは、ウィルスの本能による部分が大きいのではと感じました。やっぱり、悪意のパンデミックって超恐ろしい…

まとめ

当たり前ですが、リングを読んだ後に読むのがオススメです。至極のSFミステリーなので、このジャンルに興味のない人も一読の価値あり!

日本のみならず世界にまで広がった「山村貞子の呪い」の始まり。映画シリーズといっしょに楽しめます!

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